8月30日(土)午後、公益財団法人教科書研究センターは「みらい教育セミナー」を大阪教育大学天王寺キャンパスで開催しました。今回のセミナーは、『情報活用能力の抜本的な向上へ向けた教科書の構造的な理解とデザイン講座』として、同センター特別研究員の信州大学教育学部准教授の佐藤和紀准氏、山梨大学教育学部准教授の三井一希氏、京都教育大学教職キャリア高度化センター講師の大久保紀一朗氏、3名の講師によりワークショップ形式で行われました。
最初に登壇した大久保先生はワークショップ前の導入として、子供たちが多様化する中で紙ベースの一斉授業は限界になってきていることから、ICTも活用して個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実することが必要であること。そのためにも、子供たちが自分で教科書を読み解くことが必要で、教科書から情報を取り出し、関連付けることができるよう指導することが重要であるなどの講演を行いました。
次に、佐藤先生の進行の下で、小学校社会教科書の紙面コピーを使った教科書読解の意味と意義を体感するワークショップが行われました。参加者は、見開きの教科書の中には、本文やめあて、解説、学習問題などがあるほか、写真、挿絵、グラフなどもあり、連続型テキスト(文章)と非連続型テキスト(図表絵グラフ等)を正しく対応づける読解力が必要であることなどについて理解を深めました。さらに、深い学びと教科書読解や情報活用能力の関係性についても学び合いました。
次に登壇した山梨大学の三井先生は、「インストラクショナルデザイン(ID)」という学習理論を中心にしたワークショップを行いました。IDとは、教育活動の効果・効率・魅力を高めるための手法を集大成したモデルで、学習者が学習目標になるべく短時間で到達すること、さらに「もっと学びたい」という気持ちで終わるようにするというもので、その教育活動の目的を達成するためには、教師が学びを支援することが大切だということです。参加者は、前出した社会教科書の紙面を使った「授業デザイン」について、どのような動機付けをしたら良いかについてお互いの考えを話し合い、学習目標を明確化することで、児童生徒のゴールイメージを持たせることが重要であることを学びました。
最後に、大久保先生からまとめと振り返りが行われ、深い学びに繋げるためには、学習材(教材)の前後の繋がりにも着目することが重要であることなどが示されました。参加者は、今回のセミナーを通して、新しい授業デザインに関する理解を十分深める機会になったようです。
【ワークショップ参加者の感想】 〇もっとお話を聞きたいと思うほどあっという間に過ぎた2時間でした。今までの教科書の使い方がいかに足りていなかったかが分かりました。2学期からは教科書の読み方を子どもたちといっしょに私も進めていきたいと思います。 ○子どもたちの学びは学校の学習だけでも充分に向上できると感じているので、明日からすぐに学校として実践していきます。 ○子どもが主体的に学ぶ授業について考え続けています。そのために教科書を読み解く力は必要だということ、その力は授業でつけていくのだということがよく分かりました。

ワークショップ前の講演を行う大久保先生

ワークショップを進める佐藤先生

授業デザインについて説明する三井先生

会場全体の様子

