=教科書研究センター・大阪教育大学=「学習者用デジタル教科書(英語)の活用に関する調査研究発表会」を開催

 8月21日(水)午後、公益財団法人教科書研究センターと国立大学法人大阪教育大学の共催により、「みらい教育セミナー」として、『英語の学習者用デジタル教科書の活用に関する調査研究成果発表会』が開催されました。会場は大阪教育大学天王寺キャンパス内の“みらい教育共創館”で、対面45名、オンライン105名の教育関係者が参加しました。この発表会は、教科書研究センターから調査研究の委嘱を受けた4つの国立教員養成大学が、2年目の成果や課題について発表し合うもので、4大学による実践研究の発表の後に、パネルディスカッション形式で質疑応答や意見交換が活発に行われました。

 最初に登壇した鳴門教育大学の山森直人教授と佐藤美智子特命准教授からは、研究1年目に行った試行授業とアンケート結果をもとに主に分かったこととして、学習者用デジタル教科書を使うと、児童自身が自分のペースで個別・協働的な学びを繰り返す姿が見られたこと。そして、そこから活用の可能性や課題を読み解くことができたことなどについて報告が行われました。

 次に登壇した大阪教育大学の加賀田哲也教授からは、共同研究を行う枚方市の協力校3校における、「聞く・話す」活動に係る授業改善を踏まえた学習者用デジタル教科書の効果的な活用方法を中心に説明が行われ、学習者用デジタル教科書は外国語教育と親和性が高いことや、子どもたちが試行錯誤を繰り返し行うことができることなどが報告されました。また、質疑応答の場面では、枚方市教育委員会主幹の髙橋瑞人主幹から具体的な取り組みや事例が報告されました。

 次に登壇した愛知教育大学の建内高昭教授からは、冒頭で、エストニアなど諸外国のデジタル教科書に関する先進事例について説明されました。その後、デジタル教科書等を活用した英語授業の開発について、個々の学年やクラスに応じたロールモデルの映像(授業のレッスンを受けた段階で生徒が発表する際にもう一段階上の気づきを促すもの)を先生方が実際に作って提示する事例についての報告が行われました。

 最後に登壇した兵庫教育大学の松田充准教授と鳴海智之講師からは、教員のニーズや能力に応じたデジタル教科書の活用に関わる教員研修プログラムの開発と実施について報告が行われました。具体的には、学習者用デジタル教科書は、ハブ的な機能を持たせることで他のソフトウエアと組み合わせなど多様な可能性があることや、デジタル教科書を含めたICT活用の研修があまり多く実施されていないことなど、教員の研修不足についてです。また、兵庫教育大学の教員研修プログラムに基づき実施された研修の詳細が受講者の感想とともに報告されました。

 第二部のパネルディスカッションは、教科書研究センターの髙木まさき統括研究監による進行の下で、実践研究を発表した大学間や参加者による質疑応答と意見交換が行われました。その中で、英語の学習者用デジタル教科書の活用に関する大きな可能性が共有された一方、好事例の普及や効果的な活用に関する研修不足など共通する課題も浮き彫りになり、これらの調査研究事業が今後さらに充実発展することが期待されています。

実践研究の発表
パネルディスカッションの様子