1月11日(土)午後、公益財団法人教科書研究センターと国立大学法人大阪教育大学の共催で「みらい教育セミナー」を開催されました。ワークショップ形式の同セミナーは、『デジタル教科書の新たな可能性を探る~個別最適な学びと協働的な学びにおける活用を通じて~』をテーマにして、信州大学教育学部の佐藤和紀准教授、山梨大学教育学部の三井一希准教授、京都教育大学教職キャリア高度化センターの大久保紀一朗講師の3名の下、大阪教育大学天王寺キャンパス「みらい教育共創館」で行われました。
最初にオンラインで登壇した信州大学の佐藤准教授からは、教科書を使う効果や教科書の構造に関する理解など教科書活用の基本に関する振り返りが行われた後、自己調整学習時代の教科書活用に関する期待として、①一人でも教科書が読めるように読み方使い方を指導すること、②問題解決型の学習でデジタル教科書を活かすこと、③個別最適な学びと協働的な学びにおいてデジタル教科書は「情報の収集」「まとめ・表現」で活用されることが多いこと、④紙の教科書もデジタル教科書も一人一人が選択・判断して使えるよう学習環境をと整えることが重要であることなどの説明や情報提供が行われました。
続いて、山梨大学の三井准教授からデジタル教科書の活用場面の分類に関する調査結果が発表され、活用場面は大きく4つに分類でき、下位の分類を行うとさらに9つに分類されることが示されました。具体例として、教科別に様々な活用場面と下位分類があることが実際の教科書ページを使った説明があり、紙と教科書と同様に使う場面がある一方で、デジタルコンテンツを使う場面もあること。そのデジタルコンテンツに書き込みや付箋・テキストブックでコメントを書くこと。さらに、汎用のクラウドツールと組み合わせて使うこともあるなど、ICT活用先進校における事例の紹介が行われました。
次に、「教科書の読解ワークショップ」が京都教育大学の大久保講師の下で行われ、子どもたちに教科書の構造を教えるための教師の活動として、①教科書の構造の把握、②連続型テキストの把握、③非連続型テキストの読解、④テキスト同士の同定、⑤教科書が伝える学習活動の把握の5点があることの説明がありました。その後、社会科の教科書を使ってグループ毎の学びとディスカッションが行われ、教科書で最初に読む場所や2番目に読む場所、構造や連続型テキスト(文章)の把握とグループ化、そして非連続型テキスト(グラフや写真)の読解。さらにテキスト同士の同定(文章の内容と図表絵グラフ等が対応しているかどうか)。最後に、教科書が伝える学習活動の分類が行われました。参加者はそれぞれの考えを出し合って、見開きの教科書上にはいろいろな構造があること、その構造同士が対応し合っていること、そして、子どもたちが自ら学ぶことができる構成になっていることを理解し合いました。
【新津勝二教科書研究センター事務局長の講評】
紙かデジタルの議論の前に、教科書が子どもたちの思考力・判断力、表現力などを育成するための構造になっていること。そして、各教科書発行者が「学習指導要領のねらいを確実に達成するための創意工夫を重ねている。」ことにも気づかされたワークショップでした。新しい教科書の使い方を実践的に学ぶことができるこのようなワークショップを、若手教員や教師を目指す学生を対象にして今後も開催していきたいと考えています。
【ワークショップ参加者の感想】
〇自立した学習者を育てる第一歩として、デジタル教科書に限らず教科書の読み方を子どもたちに教えることが重要だということが良く分かりました。
○教科書の読み取り方は、校内研修でも取り扱って授業力のボトムアップを図っていきたいと思いました。
○子どもたちが教科書を自分で「読める」ようにするための指導が必要で、そこを抜きにして「自由進度」とか「複線型」などの授業は難しいと感じることができたワークショップでした。