「台北市の和平実験小学校一行が教科書研究センターを訪問」~次世代に渡る教科書の在り方などについての意見交換~

 公益財団法人教科書研究センター(東京都江東区)は、1月20日(月)午前中に台湾台北市の公立学校「和平実験小学校」一行を迎え、教科書制度や次世代に向けた教科書の在り方などについて意見交換を行いました。今回の訪問は、昨年12月に台湾で開催された国際デジタル教科書フォーラムに教科書研究センター職員が参加したことをきっかけにして、現地大学教員の紹介によって実現したものです。

 台湾における実験学校とは、既存の学校教育制度とは異なる実験性を持つ学校で2014年に成立した「実験教育法」により全国的に制度化されています。今回来日した和平実験小学校は2017年に設立された学校で、テストもチャイムもない自由な学校として広く知られています。黄志順校長以下19名の教員は、研修出張の一環として教科書研究センターを訪れました。
 教科書研究センターに到着した一行は、最初に附属図書館の見学を行いました。教科書研究センターは、台湾の国家研究院と大手出版社との間で、毎年新しい教科書の交換を行っていることもあり、和平小学校の先生方は、日本の教科書を手に取って興味深く見入り、台湾の教科書との違いなどについて意見を交わす姿が見られました。
 会議室に移動して行われた意見交換会では、冒頭で髙木まさき統括研究官から歓迎の挨拶があり、「今回の訪問をきっかけにして、教科書の交換だけではなく両国における教育改革と教科書の在り方に関する情報交換が継続されることを願っています。」ということが伝えられ、その言葉を受けた黄志順校長は、「教科書の内容を加味しつつ、教科書を超えていくことがこれからは必要だと思っています。日本の教育及び教科書に対する真摯な取組みを学び、次世代に渡る教科書の在り方について意見交換を行いたい。」と話されました。
 続いて、新津勝二事務局長から「教科書研究センターの紹介と日本における教育の情報化」についてのプレゼンが行われ、GIGAスクール構想によって、『多様な子供たちを誰一人取り残すことなくという理念の下、学習者主体の学びが実現』しつつあるなど、日本における教育情報化の現状と課題についての説明が行われました。
 プレゼンを受けた和平実験小学校の先生方からは、教員研修の進め方や学校で開かれる公開研究会の内容と回数など、さらに教科書の編集委員などに関する質疑応答が行われました。一方、センター側からは、台湾におけるデジタル教科書の活用状況や教科書の内容を踏まえた教材の開発方法などについての質疑応答が行われ、教師不足などの共通の課題についても現状が話し合われました。およそ1時間に渡って行われた意見交換会は、終始活発な議論が交わされ、双方にとってとても有意義な時間になったようです。
 最後に、黄志順校長から「教育は次世代の子供たちにどういったものを受け継いでもらいたいのか、何を学んで欲しいのかというところに焦点を向けていきたい。教科書は、先生方が教科書に使われるのではなく、中身を熟知した上でいかに活かすか使う側にならなければならないと思います。台湾と日本で共通している教育上の課題を一緒に学んで解決していきましょう。これからもよろしくお願いいたします。」という言葉が述べられ、訪問団は笑顔で教科書研究センターを後にしました。

教科書に注目する和平実験小学校の先生方
意見交換会の様子
お土産交換する髙木統括研究官と黄志順校長
笑顔あふれる全体写真