若手研究者教科書研究助成事業スタートアップミーティングを開催 ~教科書研究者の育成と教科書研究の振興~

 公益財団法人教科書研究センターは、5月26日(月)午後、令和7年度若手研究者に対する教科書研究助成事業助成対象者8名及び審査委員によるスタートアップミーティングを開催しました。この助成事業は、若手研究者による初等中等教育の教科書及びこれに関連する教材についての研究に対する助成を行うことにより、教科書研究者を育成し、もって教科書研究の振興を図ることを目的としています。
 スタートアップミーティングは、助成対象者がこれから行う研究の概要をオンライン上で発表した後に、各専門分野の審査員がコメントする方式で行われました。それぞれの発表が終わった後には、総合審査委員である髙木まさき教科書研究センター統括研究監、堀田龍也東京学芸大学教授、天笠茂千葉大学名誉教授それぞれから全体を通した講評が行われ、最後に、中川哲教科書研究センター研究顧問から激励の言葉が伝えられ、閉会となりました。
 今回のミーティングは、研究概要を発表した8名の若手研究者にとって、教科書研究を進める上での貴重な助言を得るとても良い機会になりました。

【堀田龍也総合審査委員の講評】
 多様性が求められる教育を支えていく中で、初等中等教育における教科書等のこれからの在り方や有効な活用の仕方、加えてそれが子供たちの資質向上につながるような形で研究のアウトプットをしっかりと収めていただきたいです。
【天笠茂総合審査委員長の講評】
 今日発表した内容について、ご自身の問題意識や研究の仮説というような形で表現していただくと、研究をもう一段深めていく、あるいは焦点化することになると思います。実際の授業場面において、研究やその成果がどのように生かされるのかどうか、学習者の視点として良い教科書とは何かについても意識して研究を進めて欲しいです。さらに、教科書研究を一層深めるためにも、8名の研究者間のネットワークを作ってください。

《助成対象者及び研究テーマは以下のとおり》
●プロジェクト研究
川本渚凡氏(東京外国語大学)
「小中・中高連携を促進する英語デジタル教科書の在り方に関する基礎研究」
濱田活仁氏(弓削商船高等専門学校)
「小中高等学校の外国語科教科書におけるデジタル教材の拡張性に関する調査研究  ~学習者の適正に応じた主体的な活用に向けて~」
●個人研究
大林要介氏(岩手大学)
「米国教科書との比較に基づく日本の技術教育における思考活動の特徴」
椎谷千秋氏(埼玉大学)
「中学校家庭科教科書における食文化学習の教育的意義の検討 ~和食題材に焦点を当てて~」
嶋俊樹氏(筑波技術大学)
「視覚障害者用教科書の活用状況と課題について ~社会科における点字教科書と拡大教科書を中心に~」
申智媛氏(帝京大学短期大学)
「韓国の『AIデジタル教科書』の特性と導入初期における教師の実践経験に関する研究」
林康成氏(山梨県立大学)
「初等、中等教育において科学技術を倫理、法、社会の動向から議論するための日英理科教科書のELSIに関わる言説分析」
渡津光司氏(宮城教育大学)
「教科書分析を通した中学校技術科と高等学校情報科との接点に関する研究」

スタートアップミーティングの様子

「第3回デジタル教科書体験型研修会~社会編(日本文教出版)」を開催します。(6月28日(土)午後・大阪教育大学天王寺キャンパス)

 3回目となる「デジタル教科書の体験型研修会」を大阪教育大学天王寺キャンパスで開催します。現職教員はもちろん、教師を目指す学生及び教育関係者も参加対象になっていますので、この機会に最新のデジタル教科書を体験してください。「使う必要性を感じない・・」などと言う前に、まずは一度触ってみませんか。


【参加申込方法】
 チラシの二次元コード等又は以下の大阪教育大学みらい教育セミナーのページより、お申し込みください。
第3回デジタル教科書体験型研修会~社会編(日本文教出版)~ – 大阪教育大学 みらい教育共創館

みらい教育セミナー「第2回デジタル教科書体験型研修会」を開催  ~啓林館・理科~

 5月17日(土)午後、公益財団法人教科書研究センターと国立大学法人大阪教育大学は「みらい教育セミナー」を開催しました。今回のセミナーは、『デジタル教科書体験型研修会』として、新興出版社啓林館の橋本竜夫さん、福尾浩さん、田中直樹さんを講師として迎え、大阪教育大学天王寺キャンパスみらい教育共創館で行われました。
 最初に、教科書研究センターの新津勝二事務局長からセンターの紹介とともに、デジタル教科書に関する現状報告があり、啓林館の橋本さんからは、教科書発行者としての基本的な考えとともにデジタル教科書は教科の特性によって活用場面が異なることなどの説明がありました。
 次に行われたワークショップでは、啓林館の田中さんからデジタル教科書に関する基本操作やアイコンに関する詳しい説明があり、参加者は紹介された学年別のおすすめ活用術を選んでいろいろなコンテンツを体験しました。特に、学習者用デジタル教材はもちろんのこと、授業準備や観察の安全指導に役立つ教師用コンテンツや単元の学習内容に関するおまけコラムなどに注目が集まっていました。また、質疑応答の場面では、参加者から活用方法に関する質問やデジタル教科書についての要望や感想などが述べられ、教科書編集やデジタル教科書の開発に携わってきた福尾さん、橋本さんによるより詳しい解説があり、セミナーはアットホームな雰囲気の中終了しました。
 中教審の下で「デジタル教科書活用ワーキンググループ」による中間報告が公表され、ハイブリッド教科書など新しい教科書の在り方が検討されている中、教科書研究センターとしては、他の教科書発行者の協力によるこのような体験型研修会を今後も開催する予定です。
 【セミナー参加者の感想】
〇自ら活用体験することでデジタル教科書をもっと活用したいと思いました。
○デジタル教科書の研究をする上でとても役立つ研修会でした。
○実験事故のニュースがよく放送されるので、実験動画の活用など安全指導に役立つコン テンツも知ることができて良かったです。
○温度計の使い方を確認するためのフラッシュカードや鏡で光を反射させて的に当てるゲームなどのシミュレーション機能も学びのコンテンツとして効果的だと思いました。

基本操作の説明をする田中さん

アイコンについて説明する橋本さん

関東地区教育研究所連盟研究協議会において「拡散型教員研修プログラム」を発表

 5月8日(木)、静岡市で開催された関東地区教育研究所連盟研究協議会において、公益財団法人教科書研究センターの榊原範久特別研究員(上越教育大学教授)が『校内研修リーダーを育成する拡散型教員研修プログラムの実践~学習者主体の教科書・デジタル教科書活用の研修を中心に~』というテーマで講演を行いました。 関東地区教育研究所連盟研究協議会は、国公私立教育研究所又はこれに準ずる機関をもって構成される全国教育研究所連盟の地区大会で、教育成果の発表や情報交換を行うなどの相互連携を行うことを目的として、今回は静岡県男女共同参画センターで開催されました。
 2日目の研究協議会に登壇した榊原教授は、令和6年度から行っている教科書研究センターの受託研究事業成果として、「拡散型オンライン教員研修プログラム」を開発し、山梨県教育委員会などと連携して広域展開を図っており、研修実施後の効果測定を含めた実践を発表しました。具体的には、大学と教育委員会が連携して研修計画を立案し、各学校等の代表者を対象に大学教員がオンライン研修を行います。その研修の受講者が各学校に戻り、大学教員から提供されたスライド資料を下にして校内研修の講師になって教員研修を行い、授業実践への拡散を行うというものです。このプログラムは、大学教員及び教育委員会職員が出張することなく、たくさんの学校教員を対象にした研修を展開することができることが大きな特徴になっています。
 講演後に行われたグループ毎の研究協議では、教員の働き方改革が求められる中での新しい研修の進め方として参加者の大きな関心を集め、教員研修に関する課題の共有や意見交換が積極的に行われていました。令和6年度には、山梨県教育委員会や新潟県柏崎市、妙高市、糸魚川市において同プログラムによる研修が行われましたが、今後、他の教委育委員会においても地域の実態に応じた研修が展開され内容が更に充実することが期待されています。
 なお、同研究協議会には、教科書研究センターの髙木まさき統括研究監と新津勝二事務局長・副館長が出席しました。  

【榊原教授のコメント
 教科書研究センターとの受託研究の成果を発表する機会をこのような大きな大会でいただき感謝しています。拡散型研修を受講した教育委員会や学校教員からは、各校の代表者によって共通の内容を下に校内伝達講習が行われるため、研修の意義や方向性が統一された成果を感じているなど高評価を受けていますので、今後は内容を充実させながら全国展開を目指していきたいと考えています。

【研究協議会参加者の感想】
〇研究主任の7割が若手で研修内容に自信を持つことができないという教員が多い中、大学と教育委員会とが連携した画期的な研修プログラムだと思いました。
○教員の働き方改革が求められる中、教員研修の在り方に大きな課題を感じていましたのでとても参考になりました。
○代表受講者が校内研究会の講師となる仕組みなので、オンライン研修といっても気が抜けないですね。
○単発の研修で終わることのないよう、継続性のある研修プログラムも必要だと思います。

講演する榊原教授

みらい教育セミナー「事例で学ぶNetモラル・学校情報セキュリティー」を開催

 4月26日(土)午後、公益財団法人教科書研究センターと国立大学法人大阪教育大学は「みらい教育セミナー」を開催しました。今回のセミナーは、『事例で学ぶNetモラル・学校情報セキュリティー~体験型ワークショップ~』として、広島県教科用図書販売の手塚雄三さん、好本仁朗さんを講師として迎え、大阪教育大学天王寺キャンパスみらい教育共創館で行われました。
 最初に、教科書研究センターの新津勝二事務局長からセンターの紹介とともに、「GIGAスクール構想5~6年目を迎える中、情報化の進展により情報モラルと情報セキュリティの重要性はますます高まってきている。」ことなど本セミナー開催の趣旨説明が行われました。
 次に、広島県教科用図書販売の手塚さんから事例で学ぶNetモラル教材の沿革や事例動画は情報化の進展に応じて毎年バージョンアップしていることなどの説明があり、その後、好本さんから教育現場や子どもたちの現状と課題の説明があり、二つの教材の解説が行われました。
 セミナー後半は、最初に「事例で学ぶNetモラル」教材に関するワークショップが行われ、参加者は小学生の担任としてクラスの子どもたちの現状を踏まえたうえで、アニメーション教材と読み物教材を5つ選んだ年間指導計画を作りました。著作権に特化した指導計画を作るなどそれぞれ工夫を重ねている姿が見られました。 最後に、「事例で学ぶ学校情報セキュリティ」教材のeラーニング教材を使い、学校で起こり得る事例をアニメーションで学んだあと、確認問題で理解度をチェックするワークショップが行われ、フリー素材の使い方や著作権の侵害など学校情報セキュリティの難しさとその重要さを理解する機会になりました。
【参加者の感想】
生徒への情報モラルの指導や、教職員における情報セキュリティに関する周知について課題を感じていたので、たくさんのヒントをいただきました助かりました。
〇アニメーション教材で学ぶことができるので、子供たちの理解を深めることができると思いました。
○子供たちの学習状況が一目で分かる機能もあり、学校で使ってみたいです。

教材の沿革を説明する手塚さん
教材を紹介する好本さん

大阪教育大学みらい教育共創館で行われる「第2回デジタル教科書体験型研修会(ワークショップ)」のお知らせ(2025年5月17日)

2025年5月17日(土)13:30~より、大阪教育大学「みらい教育共創館」にて、教科書発行者と連携してデジタル教科書の体験型研修会を実施いたします。このセミナーは、現職の教員、教師を目指す学生、そして教育関係者を対象としています。

<申し込み方法>
大阪教育大学みらい教育共創館みらい教育セミナーのページより、お申し込みください。

大学院生の教科書研究論文助成事業優秀賞の表彰式~教科書研究センター助成事業の成果発表~

 公益財団法人教科書研究センターは、3月19日(水)に開催した理事会において、令和5年度大学院生の教科書研究論文助成事業優秀賞の表彰式を行いました。
 令和5年度教科書研究論文の助成者11名の中から優秀賞に選考されたのは、国立大学法人奈良教育大学教職大学院の井上岳海さんで、表彰式の前に論文概要についてのプレゼンが行われ、その後たくさんの質問が出されました。
 受賞した井上さんからは、「卒業式前に、自身の研究を皆さんに聞いていただくことができて本当に良かったです。これから研究を進めて行くにあたって、ご指摘いただいたことを踏まえたいと思います。また、現場に出たときにも今回の経験を活かして、持続可能な社会の創り手を育成します。」と感謝の言葉と今後の抱負が述べられました。
 なお、教科書研究センターの助成事業で優秀賞を表彰するのは今回がはじめてのことであり、今後、教科書等に関する研究がさらに充実することが期待されています。

(受賞論文)「中学校社会科歴史的分野における教科書の改善案の検討~埋蔵文化財を活用したESDの視点から~」(国立大学法人奈良教育大学教職大学院 井上 岳海 氏)

理事会でプレゼンをする井上岳海さん
表彰状及び副賞の授与
記念撮影(左から清水潔副理事長、井上岳海さん)