公益財団法人教科書研究センター(東京都江東区)は、12月8日(日)に台湾台北市で開催された「国際デジタル教科書フォーラム」に出席して、デジタル教科書の現状と課題について講演するとともに各国関係者と情報交換を行いました。
このフォーラムは、台湾教科書出版協会が主催したもので、台湾・香港・韓国・日本からデジタル教科書に関する専門家や教育出版業者の代表が招かれました。その主なねらいは、東アジア諸国のデジタル教科書の政策展開はAI技術が教育や教育出版産業に与える影響について議論することで、会場となった張栄発基金国際会議センターには、デジタル教科書に関心を持つ200名を超える専門家や学者が集まりました。
教科書研究センターからは、千石雅仁理事長、伊東千尋理事(教育出版社)、新津勝二事務局長・副館長が出席して日本側の講演を行いました。講演に先立ち、千石理事長から、本フォーラムに招待されたことに対する御礼の挨拶とともに二人の講師紹介が行われました。続いて登壇した新津局長からは、「日本における教育の情報化とデジタル教科書の政策発展~新たな学びの実現と教職の魅力向上~」というテーマで、GIGAスクール構想による1人1台端末等の実現によって〝新たな学び“のスタイルが全国に拡がってきていること、デジタル化が進んだとしても教科書が「主たる教材」としての役割を果たしつつ、デジタル教材や学習支援ソフトウエアとの接続、連携強化を図ることが必要であることなどの説明が行われました。次に登壇した伊東理事からは、「デジタル教科書の発展への取り組み」として、デジタル教科書の開発を行っている立場から、デジタル教科書の現状と課題についての説明が行われ、その課題を解決するためには、教育のデジタル化が、個別最適な学びを実現するとともに、双方向性を確保し、学習履歴を可視化するなどそれぞれがシナジーを生み、教育効果が最大化されるということを先生方に理解していただく必要があることなどが語られました。
各国の講演後に開催された座談会では、それぞれの講演に対する質疑応答が行われ、AIデジタル教科書やAI教材用のプラットフォームの構築に質問が集中する中、GIGAスクール構想の効果として、「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、個別最適な学びと協働的な学びが着実に拡がってきていることなどの説明を新津局長が行い、参加者の関心を集めていました。
なお、センター一行は、翌9日(月)午前中に国家教育研究院を訪問し、教科書図書館を見学した後、研究院長や教科書研究センター研究員、図書館館長と、今後の連携方策等について意見交換を行いました。また、午後からは、台湾における大手教科書発行者の一つである康軒文教社を訪れ、デジタル教科書について活発な意見交換とデジタル教科書の操作体験を行うなどして、充実した3日間の出張を終えました。